Vol.168 骨太の方針と労働市場改革

2023年07月06日


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◇◇ ASTATE Monthly Letter ◇◇
(アステートメールルマガジン Vol.168)
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今月のひと言
「骨太の方針と労働市場改革」 代表取締役 福山 研一

6月に閣議決定された骨太の方針2023では、三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と、「人への投資」の強化がうたわれていました。
三位一体の労働市場改革とは、
(1)リ・スキリングによる能力向上支援
(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入
(3)成長分野への労働移動の円滑化
を指しています。

今回のポイントとしては、企業主導ではなく、労働者主導の労働移動とみられています。解雇規制の見直しなどは含まれず、特に(1)(3)など、労働者自身の選択の幅を広げる施策かと思います。

(1)については、現状でも教育訓練給付金の活用で、働きながら個人で外部講座の受講や資格取得など自己啓発に励む方も多くいますが、そうした制度の拡充が進められるようです。
(3)については、例えば失業保険の給付において、自己都合離職の場合でも、リスキリングに取り組んでいた場合は、会社都合離職と同様に早期に給付が受けられるようにするなど、要件緩和の見直しが 考えられています。
ただ、転職を考える人は、離職期間を挟まずに次の仕事に移るケースが多く、これが労働移動を促すとは考え難いという見方もあります。

また(2)については、各企業の人事制度上で、ジョブ型の考え方など取り入れている企業もあるかと思いますが、2024年4月から、求人に際して、従事すべき業務変更の範囲や就業場所の変更の範囲の明示が義務付けられるようになり、その布石とも解釈することができます。

具体的な内容は順次示されていくことになりますが、ここまでみた限りでは大きなインパクトを与えるものでもないように思われます。ただし、国の政策の方向性として、労働者主導で成長分野への労働移動を図ろうとしていることは押さえておいた方がいいように思います。それにそって、採用活動や人事制度の構築、また助成金の有効活用なども考えていきたいものです。